創世記

−ヨセフ、穴のなかに投げこまれる−

こうして、ヨセフが兄たちのところへやってきたとき、兄たちはヨセフの着ていた色とりどりの美しい服をはぎとり、ヨセフをひきずっていって、穴のなかにほうりこみました。その穴には、水も何もありませんでした。

それからしばらくして、兄たちがパンをたべていますと、香料、香液、もつ薬をラクダにのせた隊商がやってきました。かれらは、ギレアデからエジプトに荷もつをはこんでいるイシマエル人でした。

それを見たユダが「弟を殺して血をかくしたってしかたない。それよりも、イシマエル人にヨセフを売りとばしたほうがいいじゃないか。なんといっても、ヨセフはわれわれの肉親なのだから」と言いますと、ほかのきょうだいたちも賛成しました。

そこでヨセフを穴からひきあげて、銀二十枚でイシマエル人に売りました。こうしてヨセフは、商人たちの手でエジプトにつれてゆかれたのです。

そのときそこに居あわさなかった兄ルベンは、もどってきて、穴がからっぽなのを知り、たいへん悲しみました。「あの子は穴のなかにいない。ああ、わたしはどこをさがしたらいいんだろう」と、きものをひきさいてなげきました。

きょうだいたちは、若いヤギを殺してヨセフのきものをその血にひたし、父に「お父さん、こんなものが見つかりましたよ。ヨセフのきものではないか、よく見てください」と言いました。

父はこれを見て、「これは、たしかにヨセフのきものだ。あの子は、けものに食い殺されたのか。すたずたにひきさかれてしまったのか」と、なげき悲しみ、あら布のもふくをきて、なんにちもなんにちも、息子の死んだことを悲しみました。

息子や娘たちが、父をなぐさめようとしましたが、ヤコブはききいれようとせず、「わたしは、死ぬまであの子の死をなげきかなしもう」と、いつまでもなきつづけました。

(つづく)

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