独立伝道のはじめごろ。

小鳥を籠に入れて、ある少年に請われて、東京の下町にミッションに出掛けた。

後でわかったのだが、少年の家族はある新興宗教団体の信者だった。

迷惑がられた。

それとは知らず、少年と小鳥と、壁、床、天井に向かって、心を込めてキリストの愛を話した。

たたみ四十畳くらいの部屋にぽつんと、少年と小鳥だけだったが聖霊のご臨在を信じて愛の証をした。

集会の知らせは紙に筆書きにして小さな会場の入り口に貼り出したが、いつの間にか破り捨てられていた。

嫌がらせ、妨害もかなりあったが、何より私を力付けた出来事は、少年の顔に変化が見られた。暗い顔が輝いていた。

何度目だったか?これが最後の礼拝と考えて出掛けた。

それまで姿を見せなかった、離れに住んでいた、少年の小柄なおじいちゃんに呼び止められた。

てっきり文句を言われると?思いきや!

いきなり素肌を見せて、「俺はこの通り刺青だらけのヤクザもんだが、あんたは孫を心底、思ってくれている!有り難う!今後ともよろしく頼む」と、言われた。

「あんたはこの通りの住民を知らんだろうが?キリスト教大嫌いの人だらけだよ!あんたは度胸があるね!」

数回の短いミッションは、あっけなく終わったが、少年と祖父の心に灯った温もりと希望が今も忘れられない。

愛の樹オショチ†

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