−宗谷岬に祈る−

その日の宗谷岬の夕暮れの美しさは格別であり、たとえようもなかった。アイが救われたこともあって、心ゆくまで、この岬で休息をとった。

ここは、日本最北端の地、樺太への望郷、氷雪の門がある。

「北緯45度31分14秒」

日本人悲願の北方領土返還の祈りの聖地でもある。留萌と又、異なった意味で、北方四島帰属の日を切々と祈らされた。

あの間宮林蔵の出発の地でもある。苦難を超えて、偉業を成し遂げた男の顔が、夕映えの中に、じっと立ちつくし、北方の海の彼方を静かに見つめていた。

−クリオン島のトラクト伝道−

ここでの一夜の眠りは素晴らしい朝となった。紋別に向かう途中、浜頓別、枝幸町、雄武町へとトラクトを配り始めた。

クリオン島のトラクトがパイロットファームに、民家に、そして、小中学校に、まるで羽根がはえたように飛んでゆく。祈りが天に吸い込まれ、手応えがある。いつの日か、この町々に、村々に、私たちの同志が与えられるかもしれない。よい予感がした。

アイン号も快調にエンジンの唸りをあげて生き生きと走ってくれる。アイも元気を取り戻して、じっとしてはいない。しきりに外を眺めている。

サイドミラーを見ると後輪が見えた。小さな車輪が一生懸命に廻っている。

当たり前の事だが、アイン号も「生き物」、よくもまあ、この小さな足でと思うと、胸が熱くなってきた。網走も近い。

(つづく)

「心の旅路」より抜粋

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