【心の旅路】

巻頭言

−父を訪ねて5000キロ−

児童文学者 神戸淳吉

この本は著者の伝道旅行記を柱に3人の方々の生活体験など6編で構成されている。いずれもあついキリスト信仰に裏付けされ、ずっしりと重く、また何度も涙させられる。と、いっても、信仰書にありがちな堅さはなく、読みやすい。

この本に盛られているいくつもの美しい話、著者自身のことや身内の姉妹、お弟子さんらの体験だけに、説得力があり、改めて神の臨在を実感させられる。

ところで、この本を読まれる時、できれば、北海道の地図を手元に置かれるとよいと思う。著者は住まいのある東京都下の町田から単身(小型のシーズ犬も同行)四駆を運転、長駆北海道一周をされた伝道記録だからである。

もう1つ、著者は肝不全に苦しめられつつの旅行であったことも書き添えておきたい。

では、何のために渡島したのか。著者の進めているフィリピン・クリオン島のハンセン病患者を助けるためのトラクト配布を兼ねた伝道旅行か。実は著者は生まれる前に実父と離別するが、その方の住むという北海道は十勝の池田町まで「父を訪ねて5000キロ」の旅に出たためである。

けれども、それまで音信がなかったとはいえ、訪ねる実父は数年前に亡くなっていたとわかる。何と残酷な旅路であったろう。この本はそうした万感の思いが込められているのではなかろうか。

さて、先に進む。著者が北海道へ渡って初めて会われた方との場面も美しい。この地方でも暑いはずの8月、台風の余波の悪天候のなか、函館のトラピスト修道会の墓地での老修道士との出会いは西欧の短編小説でも読む思いがする。

また、激しい嵐のさなか、それも深夜、原生林の中でエンコした車中での夜明かし、それが救出されるまでのいきさつもまた、神の実在を信ぜずにはいられない。

まだ、お伝えしたいものがいくつもあるが、残念ながら、3、4章分は割愛せざるを得ない。ただし、その中の1章に著者がお弟子さんを一喝するくだりがある。クリスチャンは幸か不幸か、慈愛、寛容、あるいはそれに似たイメージをもたれるが、著者は硬軟両面ある方のようで、それによってお弟子さんが立ち直ったエピソードがここに書かれている。

著者はこのほかホームレスの人たちの救援にもあたっておられるが、胸をうつ美しいが痛ましい話も記されている。

ぜひ、これらの文中の主人公らと共に、私もまた、神を賛美したいと、そう思わされる好著であった。

(キリスト新聞1996年12月14日号「書評」より)

1添付地図は筆者とアイのミッションのルートを赤線で記します。

2函館トラピスト・の位置

3伝道の相棒・アイ

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