人間、死を間近にすると、今まで見えなかったものが見えたり、気がつかなかった、こまごました事に気付いたりします。
不思議に心身が研ぎ澄すまされます。
他者への、優しさが与えられます。
鬼の様な心にも、慈悲心が与えられます。
心が変化します。
覚悟が与えられます。
死の恐怖感が薄らぎます。
人間に死を与えたもう御方がそうなさるのでしょう!
『この地上に生きる人間は兵役にあるようなもの。
傭兵のように日々を送らなければならない。奴隷のように日の暮れるのを待ち焦がれ
傭兵のように報酬を待ち望む。そうだ
わたしの嗣業はむなしく過ぎる月日。
労苦の夜々が定められた報酬。横たわればいつ起き上がれるのかと思い
夜の長さに倦み
いらだって夜明けを待つ。
肉は蛆虫とかさぶたに覆われ
皮膚は割れ、うみが出ている。わたしの一生は機の梭よりも速く望みもないままに過ぎ去る。
(注:梭→ひ。
機織りの横糸を巻いて管を入れて左右に忙しく動く船の形の道具)
忘れないでください
わたしの命は風にすぎないことを。
わたしの目は二度と幸いを見ないでしょう。わたしを見ている目は、やがてわたしを見失い
あなたが目を注がれても
わたしはもういないでしょう。密雲も薄れ、やがて消え去る。
そのように、人も陰府に下れば
もう、上ってくることはない。再びその家に帰ることはなく
住みかもまた、彼を忘れてしまう。わたしも口を閉じてはいられない。
苦悶のゆえに語り、悩み嘆いて訴えよう。わたしは海の怪物なのか竜なのか
わたしに対して見張りを置かれるとは。「床に入れば慰めもあろう
横たわれば嘆きも治まる」と思ったが
あなたは夢をもってわたしをおののかせ
幻をもって脅かされる。わたしの魂は息を奪われることを願い
骨にとどまるよりも死を選ぶ。もうたくさんだ、いつまでも生きていたくない。
ほうっておいてください
わたしの一生は空しいのです。人間とは何なのか。
なぜあなたはこれを大いなるものとし
これに心を向けられるのか。朝ごとに訪れて確かめ
絶え間なく調べられる。いつまでもわたしから目をそらされない。
唾を飲み込む間すらも
ほうっておいてはくださらない。人を見張っている方よ
わたしが過ちを犯したとしても
あなたにとってそれが何だというのでしょう。
なぜ、わたしに狙いを定められるのですか。
なぜ、わたしを負担とされるのですか。なぜ、わたしの罪を赦さず
悪を取り除いてくださらないのですか。
今や、わたしは横たわって塵に返る。
あなたが捜し求めても
わたしはもういないでしょう。』(ヨブ記7:1~21)
続きます。
愛の樹オショチ†