私が愛の教訓を学んだのは、(心底から体験したのは)少年時代でした。
悪童の私のいたずらが止まらず、ある夜庭の柿の樹に縄できつく縛りつけられました。
一晩中です。
腹は減るし、足元から蟻んこがはい上がって来ます。
悲鳴をあげたい気持ちを必死にこらえました。
自分のいたずらを棚にあげ、母への仕返しを考えていました。
「いまに見ちょれ!必ず仕返しするばい!」
縄をほどこうとしますが、反って手首に食い込んできます。
もう諦めました。
なるようになる!腹をくくると眠たくなりました。
どのくらい経ったのか?
“かたっ!”
はっと!して目を開けると母の姿が目に飛込んできました。
一晩中私を見守っていてくれたのでした。
悪童の将来を深く考え、憂いていたのです。
母は涙を流していました。
さすがの悪童もはっ!としました。
深く胸を打たれ、母の前に手をつき心から「ごめんね!」と謝りました。
母の教訓は体当たりでした。
私が勉学のために上京すると決めた時、なけなしのお金をはたいて渡してくれました。
久大線・日田駅のプラットホームから汽車が見えなくなるまで手を振り続けていました。
今も瞼(まぶた)の裏に焼き付いて離れません。
母の愛に私は育てられました。
決して忘れません!